完全バックアップ、増分バックアップ、差分バックアップ

Acronis Backup & Recovery 10 には、GFS (Grandfather-Father-Son)やハノイの塔などのよく使われるバックアップ スキームを使用する機能が用意されています。また、カスタムのバックアップ スキームを作成することもできます。 すべてのバックアップ スキームは、完全バックアップ、増分バックアップ、差分バックアップの方法に基づいています。 「スキーム」という用語は、実際には、これらのバックアップ方法を適用するアルゴリズムとアーカイブのクリーンアップを行うアルゴリズムを示しています。

これらのバックアップ方法は 1 つのバックアップ スキームの中でチームとして機能するため、それぞれの方法を相互に比較してもあまり意味がありません。 これらのバックアップ方法は、それぞれの長所に応じて特定の役割を果たします。 すべてのバックアップ方法の長所を生かし、すべてのバックアップ方法の短所の影響を軽減することにより、優れたバックアップ スキームとなります。 たとえば、週単位の差分バックアップでは、そのバックアップに依存する日単位の増分バックアップの 1 週間分のセットと共にアーカイブを簡単に削除できるため、アーカイブのクリーンアップが容易になります。

完全バックアップ、増分バックアップ、または差分バックアップの方法でバックアップを行うと、それぞれに応じた種類のバックアップが作成されます。

完全バックアップ

完全バックアップでは、バックアップ対象に選択されたすべてのデータが保存されます。 完全バックアップはすべてのアーカイブの基礎となり、増分バックアップと差分バックアップのベースを形成します。 1 つのアーカイブに複数の完全バックアップが含まれる場合も、アーカイブが完全バックアップだけで構成される場合もあります。 1 つの完全バックアップはそれ自体で完結しているので、完全バックアップからデータを復元するために、それ以外のバックアップにアクセスする必要はありません。

一般的に、完全バックアップは作成時間が最も長く、復元時間が最も短いバックアップ方法であるとみなされています。 Acronis テクノロジでは、増分バックアップからの復元が完全バックアップからの復元と同じくらい高速な場合もあります。

完全バックアップが最適なのは次の場合です。

例: インターネット カフェや学校の教室では、利用者や学生が加えた変更を管理者が元に戻すことが多く、ベースとなるバックアップを更新することがほとんどありません(インストール後はソフトウェアの更新のみが行われます)。 この場合、バックアップに要する時間は重要ではなく、完全バックアップからシステムを復元するため復元時間は最短となります。 信頼性向上のために、管理者が完全バックアップのコピーを複数用意することもできます。

増分バックアップ

増分バックアップは、前回のバックアップに対するデータの変更点を保存します。 増分バックアップからデータを復元するには、同じアーカイブの他のバックアップにアクセスする必要があります。

増分バックアップが最適なのは次の場合です。

一般的に、増分バックアップは完全バックアップより信頼性が低いとみなされています。これは、「チェーン」内の 1 つのバックアップが破損した場合、それ以降のバックアップが使用できなくなるためです。 ただし、データの以前のバージョンを複数保存する必要がある場合、完全バックアップを複数保存する方法は選択肢にはなりません。これは、アーカイブが大きすぎることで信頼性の問題が大きくなるためです。

例: データベースのトランザクション ログのバックアップ。

差分バックアップ

差分バックアップは、前回の完全バックアップに対するデータの変更点を保存します。 差分バックアップからデータを復元するには、対応する完全バックアップにアクセスする必要があります。 差分バックアップが最適なのは次の場合です。

一般的には、差分バックアップは作成時間が長くて復元時間が短く、増分バックアップは作成時間が短くて復元時間が長いと見なされています。 実際には、同じ時点で同じ完全バックアップに追加された増分バックアップと差分バックアップに物理的な違いはありません。 前述の違いは、複数の増分バックアップの作成後に(または作成する代わりに)差分バックアップを作成することを意味します。

ディスクの最適化後に作成された増分バックアップや差分バックアップのサイズが、通常より大幅に大きくなることがあります。これは、最適化によってディスク上のファイルの位置が変更され、バックアップにそれらの変更が反映されるためです。 ディスクの最適化後に、完全バックアップを再作成することをお勧めします。

次の表は、一般的知識に基づいた、各バックアップ種類の長所と短所を示しています。 実際には、これらのパラメータは、データ変更の量、速度、パターンのほか、データの性質、デバイスの物理的な仕様、設定したバックアップ/復元オプションなどの多くの要因に左右されます。 最適なバックアップ スキームを選択するうえで最も参考になるのは実践結果です。

パラメータ

完全バックアップ

差分バックアップ

増分バックアップ

ストレージ領域

最大

中程度

最小

作成時間

最大

中程度

最小

復元時間

最小

中程度

最大