ここでは、プログラムの動作のしくみを理解するうえで役立つと思われる、基本的な概念について説明します。
バックアップとリカバリ
バックアップとは、元のデータが失われてもそのコピーからリカバリできるように、データのコピーを作成しておくことを指します。
バックアップの主な目的は 2 つあります。1 つは、障害または災害発生後に状態を復旧することで(「災害復旧」という)、もう 1 つは、誤って削除されたか破損した少数のファイルをリカバリすることです。
Acronis True Image 2013 は、この最初の目的を達成するために、ディスク(またはパーティション)イメージの作成機能を備え、第 2 の目的のために、ファイル レベル バックアップ作成機能を備えています。
バックアップ バージョン
バックアップ バージョンは、それぞれのバックアップ処理中に作成された単独または複数のファイルです。統合機能を使用しない場合、作成されるバージョンの数は、バックアップが実行された回数、または保存が実行された時点の数と常に同じになります。
つまり、バージョンはそれぞれ特定の時点を表しており、その時点の状態にシステムやデータを復元することができます。言い換えれば、バックアップ バージョンは、完全バックアップ、増分バックアップ、および差分バックアップを表しています。「完全バックアップ、増分バックアップ、差分バックアップ」を参照してください。
バックアップ バージョンは、ファイル バージョンと似ています。ファイル バージョンという考えは、「以前のバージョンのファイル」と呼ばれている Windows Vista や Windows 7 の機能を使用しているユーザーにはよく知られています。この機能を使用すると、ファイルを特定の日時における状態に復元できます。バックアップ バージョンを使用すると、同様の方法でデータをリカバリできます。
バックアップ バージョンは、破損したり削除されたりしたファイルを見つけようとする場合に便利です。目的のファイルが格納されたバックアップ バージョンが見つかるまで Acronis Backup Explorer 内の各バックアップ バージョンを参照するだけです。さらに、発見されたファイルの異なる保存済みバージョンをリカバリすることもできます。
増分バックアップ バージョンには、もう 1 種類あります。パーティションを書き込み可能モードでマウントすると、プログラムはマウントされたイメージが変更されるものとみなし、変更内容を取り込む増分バージョンを作成します。この種類の増分バージョンのプロパティは多少異なっています。たとえば、統合することはできません。
ディスクのクローン作成
これは、1 つのディスク ドライブの内容全体を別のハードディスク ドライブに移行/コピーする処理です。たとえば、大容量のディスクを取り付ける場合などに、この機能が必要となる場合があります。この機能を使用すると、同じファイル構造を持つ 2 つのまったく同じドライブが作成されます。「ディスクのクローン作成」ツールを実行すると、1 つのハードディスク ドライブのすべての内容が別のハードディスク ドライブにコピーされます。この処理を利用すると、ハードディスク ドライブの内容が、オペレーティング システムやインストール済みプログラムも含めてすべて別のドライブに転送されるので、すべてのソフトウェアを再インストールして再設定する必要はなくなります。
Acronis True Image 2013 では、特定のパーティションのみのクローン作成はできません。クローンを作成できるのは、ドライブ全体のみです。
ハードディスク ドライブの情報をすべて別のドライブに転送するには、他にも、古いハードディスク全体をバックアップしてから、そのバックアップを新しいディスクにリカバリするという方法があります。
バックアップ ファイルの形式
Acronis True Image 2013 では、通常、バックアップ データは独自の TIB 形式で圧縮して保存されます。その結果、必要な保存領域を減らすことができます。
TIB ファイルの作成時に、データ ブロックのチェックサム値が計算されて、バックアップ対象のデータに追加されます。このチェックサムの値を使用すると、データの整合性を検証できます。
Acronis True Image 2013 プログラムだけを使用して、tib ファイルのバックアップのデータをリカバリできます。このリカバリは、Windows またはリカバリ環境で実行できます。
ただし、Acronis True Image 2013 では、よく知られた zip 形式でデータを保存することも可能です。zip 形式を使用すると、Acronis True Image 2013 を使用しなくても、任意のロケーションにあるバックアップからファイルを取り出すことができます。
最も広範に利用されているオペレーティング システムである Microsoft Windows と Mac OS X には、zip ファイル形式のサポートが組み込まれているためです。
Acronis ノンストップ バックアップでは、データおよびメタデータ用に特殊な隠しストレージが使用されています。バックアップ データは圧縮され、約 1 GB の複数のファイルに分割されます。また、ファイルには独自の形式が採用されており、保存されたデータは、Acronis True Image 2013 のみを使用してリカバリできます。
バックアップのベリファイ
バックアップのベリファイ機能を使用すれば、データをリカバリできるかどうかを確認できます。前述のように、バックアップされるデータにはチェックサム値が追加されます。バックアップ ベリファイの実行時に、Acronis True Image 2013 はバックアップ ファイルを開いてチェックサム値を再計算し、保存されているチェックサム値と比較します。比較した値がすべて一致していれば、そのバックアップ ファイルは破損していないので、バックアップからのデータ リカバリはかなり高い確率で成功します。
統合
統合を行うと、バックアップ チェーンから不要になったバックアップを削除することができます。
統合するチェーンは、完全バックアップ、および、1 つまたは複数の増分バックアップという構成にできます。
必要に応じて、バックアップ チェーンからベースの完全バックアップを削除できます。プログラムによって、残っている最も古いバックアップの代わりに新しい完全バックアップが作成されます。統合では、選択されたバックアップが保持され、選択されなかったバックアップは削除されます。
統合には長い時間と、大量のシステム リソース(ディスク領域を含む)が必要になる可能性があるので、統合する場合は慎重に検討することをお勧めします。多くの場合、新しいバックアップ チェーンを開始してから古いバックアップ チェーンを削除するほうがよいでしょう。
Acronis ノンストップ バックアップでは、異なる統合メカニズムが使用されています。Acronis ノンストップ バックアップでは、バックアップ データを管理するために使用されるメタデータが統合されます。メタデータの情報量はバックアップ データ量よりもはるかに少ないので、統合で必要になる時間とシステム リソースも大幅に少なくなります。
災害復旧
障害からのリカバリには、通常レスキュー メディアおよびシステム パーティションのバックアップが必要になります。
Acronis True Image 2013 は、システム データの破損、ウィルス、マルウェアなどを原因とする障害からの復旧を行います。
オペレーティング システムが起動できなかった場合、Acronis True Image 2013 によって、システム パーティションがリカバリされます。パッケージ版の製品には、レスキュー CD が同梱されています。それ以外の方法で購入された場合は、メディア ビルダ ツールを使用することによって、レスキュー メディアを作成できます。
スケジュール設定
作成したバックアップを実際に役立てるには、可能な限り「最新」のバックアップを作成しておく必要があります。つまり、バックアップは定期的に、たとえば 1 日に 1 回実行してください。Acronis True Image 2013 バックアップは簡単に作成できますが、バックアップを実行し忘れてしまうこともあります。
そのような作業はスケジューラに任せることができます。スケジューラを使用すれば、自動バックアップのスケジュールをあらかじめ設定できます。十分なストレージ領域が存在する限り、データはバックアップされます。
このプログラムの機能を使用する場合、これらの用語と概念を理解しておくと役立ちます。