頻繁なバックアップが必要な場合は、このようなバックアップを長期間保持するコストが常に問題になります。ハノイの塔(ToH)バックアップ スキームは妥協案として役立ちます。
ハノイの塔の概要
ハノイの塔バックアップ スキームは、同じ名前の数学的なパズルを基にしています。このパズルでは、中央に穴の開いた大きさの異なる複数の円盤と 3 本の杭があり、最初はすべての円盤が 1 番目の杭に大きいものが下になるようにサイズ順に積み重ねられています。すべての円盤を 3 番目の杭に移動したら完成です。一度に移動できる円盤は 1 つだけで、小さい円盤の上に大きい円盤を乗せることはできません。この解き方として、最初の円盤を他の円盤の移動ごと(1、3、5、7、9、11...回)、2 番目の円盤を 4 回間隔(2、6、10...回)、3 番目の円盤を 8 回間隔(4、12...回に移動)のように移動します。
たとえば、A、B、C、D、E というラベル付きの 5 つの円盤がある場合、この解き方では次の順序で円盤を移動します。
ハノイの塔バックアップ スキームはこれと同じパターンに基づいています。移動の代わりにセッション、円盤の代わりにバックアップ レベルによって処理します。一般に、N レベルのスキームのパターンには、2 の N 乗のセッションが含まれます。
このため、5 レベルのハノイの塔バックアップ スキームは、16 セッション(上の図の 1 から 16 までの移動)で構成されるパターンを繰り返します。
次の表は、5 レベルのバックアップ スキームのパターンを示しています。パターンは 16 セッションから構成されます。
ハノイの塔バックアップ スキームでは、レベルごとに 1 つだけバックアップを保持することになります。古いバックアップはすべて削除する必要があります。したがって、このスキームではデータ ストレージの効率が上がり、現時点に向けてバックアップが蓄積されます。4 つのバックアップがあれば、今日、昨日、3.5 日前、または 1 週間前のデータを復元できます。5 レベルのスキームでは、2 週間前にバックアップされたデータも復元できます。このように、バックアップ レベルを増やすたびに、データの最長復元期間が倍になります。
Acronis によるハノイの塔
ハノイの塔バックアップ スキームは一般に複雑すぎて、次に使用するメディアを頭で計算できません。しかし、Acronis Backup & Recovery 10 を使用すると、このバックアップ スキームの使用を自動化できます。バックアップ スキームは、バックアップ計画の作成時に設定できます。
このスキーム用の Acronis の実装には、次のような特徴があります。
次の表は、5 レベルのバックアップ スキームのパターンを示しています。パターンは 16 セッションから構成されます。
増分バックアップと差分バックアップを使用した結果、古いバックアップが他のバックアップのベースとなっていることによって、その削除が延期される状況が発生します。次の表は、セッション 9 で作成された差分バックアップ(D)がまだ存在しているために、セッション 1 で作成された完全バックアップ(E)の削除が、セッション 17 でセッション 25 まで延期される状況を示しています。この表で、バックアップが削除されたセルはすべて灰色表示になっています。
セッション 9 で作成された差分バックアップ(D)は、新しい差分バックアップの作成が完了した後、セッション 25 で削除されます。このように、ハノイの塔バックアップ スキームに従い、Acronis によって作成されたバックアップ アーカイブには、このスキームの標準的なバックアップの他に最大 2 つの追加バックアップが含まれる場合があります。
テープ ライブラリにハノイの塔を使用する方法については、「ハノイの塔テープ ローテーション方法の使用」をご参照ください。