
By Patrick Hurley, Vice President and General Manager, Americas, Acronis
マネージドサービスビジネスを拡大したいけれども時間とリソースが足りない、という声をよく聞きます。成長モードにあるマネージドサービスプロバイダー(MSP)では、このような状況は特に顕著です。ITのコストとマネージドサービスに対する需要の継続的な増大をビジネスの拡大につなげるためには、拡大計画を策定して実行することが極めて重要となります。
Spiceworks Ziff Davisが最近行った調査によると、企業の過半数(51%)が2023年のIT予算増を計画しています。また、そのうちマネージドサービスへの支出が占める割合は、2020年には15%でしたが、2023年には18%に増加すると予想されています。
世界経済が不確実な今こそ、MSPビジネスを拡大すべき絶好のタイミングです。このプロセスには困難が伴い、時間もかかりますが、拡大を進めることで、その努力に見合った収益を実現し、長期的なビジネスチャンスを得ることができます。幸いにも、このプロセスを効率化し、時間とコストを節約するためにできることが複数あります。
以下に、そのためのヒントをいくつかご紹介します。
1. 計画を策定する
最初のステップは、戦略を策定することです。タスク、業務分担、スケジュールを明確にしてしっかり構成したうえで、次のような重要な情報を含める必要があります。
- ビジネスの概要(ミッション、目的、コアバリュー、価格体系、予算、サービス、製品の概要など)。
- 各チームメンバーの責任、スキルセット、経験レベル。
- 組織の明確な目標。
MSPはこの戦略的計画を、ビジネス、従業員、顧客に影響を及ぼすあらゆる意思決定の指針として使用できます。環境面または組織面での変化が生じた場合は、プロバイダーが通常どおり適切な調整を行えます。
2. 新規顧客や新しいサービスで価格調整
新たに投資することなく確実に収益を拡大するためのベストプラクティスは、特定の領域で料金を引き上げることです。経済情勢が不透明であることから、一部の顧客は値上げに敏感になっている可能性があります。そのため、MSPは料金体系の変更を躊躇するかもしれません。しかし、新規顧客向けの料金や、既存の契約にサービスを追加することにより料金を引き上げる余地は残されています。このような成長機会から多くの追加収益を得ることで、既存顧客を失うことなくビジネスを拡大できます。
例えば、MSPは更新で15%、新規顧客については20~25%料金を引き上げることができます。これにより、利幅を拡大できるだけでなく、市場におけるプロバイダーとしての地位を高め、優良顧客を引き付けることができます。
ただし、料金を引き上げる前に、更新の提案時に製品やサービスを追加して、値上げが妥当なものである必要があります。値上げ額は、取引に関わるすべての当事者が納得できる額に設定する必要があります。MSPは、料金体系を変更する前に市場を分析することで、少なくとも現在の市場が値上げを支持するかどうかを見極める必要があります。
3. プロフェッショナルサービスオートメーション(PSA)ソフトウェアを実装する
時間とコストを節約し、成長目標を達成するには、組織化することが重要です。PSAを使用することで、顧客情報、インベントリ、請求可能時間、休暇届に加えて、プロジェクト、リソース、時間、支出など、その他の主要なビジネスプロセスを一元的に管理できます。
これらのツールには、CRMのトラッキングや、販売およびチケットシステム、ヘルプデスク管理が含まれる場合があります。
MSPは、ビジネスの目標を理解してから自動化に着手する必要があります。PSAにそれらの情報を入力する前に、主要目標を設定し、プロセスを最適化することで、社内のリソースを最大限に活用できます。
4. リモート監視管理(RMM)が不可欠
MSPは、リモート監視および管理ツールを使用することで、集中管理ダッシュボードから遠隔で顧客のデバイス、サーバー、ネットワークを管理できます。これらのシステムにより、ソリューションプロバイダーは追加の人員を雇ったり、多額の残業代を負担したりすることなく、24時間365日体制を実現できます。このように24時間サポート体制を敷くことで、インシデント対応率、顧客満足度、顧客維持率が向上します。
MSPは、使用しているPSAツールに統合可能な、柔軟性の高いRMMソリューションを選択する必要があります。このような統合により、信頼性の高い安全なサポートを簡単に提供できるようになります。
5. ツールを実装してキャッシュフローを最適化する
MSPが成長するためには、資金の流れを把握することが不可欠です。最も成功しているプロバイダーでさえも、特に複数の顧客のオンボーディングを行っている場合、絶えず注意を払っていないとキャッシュフローの問題にぶつかる可能性があります。
MSPは、支払・会計アプリケーションを使用することで、財務状態をコントロールおよび改善できます。こうしたアプリケーションは、ビジネスにおける資金の流れを追跡し、請求と回収を管理して、財務上の長期的および短期的な問題について、より洞察に富んだ意思決定を行うのに役立ちます。
プランを実行する
MSPビジネスを拡大するプロセスは、複雑かつ困難になる場合があります。効果的な計画とツールにより、プロバイダーは活動における柔軟性を高め、少ない人員と予算でより多くのことを行えるようになります。効果的な拡大戦略を策定することで、利幅に関する重圧を軽減し、サポートスタッフの負担を取り除くことができます。
MSPは、収益性、組織化、キャッシュフロー管理、顧客サービスおよびエンゲージメントの向上を目指して策定された戦略を実践することで、より簡単に業務を拡大できます。この優れた方法により、カスタマーサポートの高い基準を満たしつつ、組織の価値を高めることが可能になります。
Acronis について
Acronis は、2003 年にシンガポールで設立されたスイスの企業で、世界 15ヵ国にオフィスを構え、50ヵ国以上で従業員を雇用しています。Acronis Cyber Protect Cloud は、150の国の26の言語で提供されており、20,000を超えるサービスプロバイダーがこれを使って、750,000 以上の企業を保護しています。